いろいろな温度と湿度の環境を作る装置として恒温恒湿槽があります。
これがとても便利な箱で・・・
部品の耐久性試験、薬などの保存安定性試験、いろいろな研究開発などにも使われているのですね。
日本の製品は壊れないという定説の陰には、
この恒温恒湿槽という存在が欠かせないのであります。
特に自動車業界ではこのような装置を5000台以上所有している会社もあるので、
ちょっと驚いてしまいます。
話は脱線しますがこの恒温恒湿槽の恒の字を調べてみると・・・
①いつでも変わることなく同じであること。永久不変であること。
②いつもそうであること。ふだん。平素。
③昔からそのようになるとされていること。当然の道理。ならい。ならわし。
と書いてありました。
「いつもそうであること」はまさに温度と湿度の環境を一定にする事に通じていますが、
ここでちょっと意地悪な解釈をしてみますね。
「昔からそのようになるとされていること」という言葉。
これを「本当に今のままで良いの?」という切り口で解説してみます。
まずは恒温恒湿槽の仕組みを見てみましょう。
扉を開けて中を覗いてみると奥に空気の取り入れ口と吹き出し口が見えます。
実はこの奥にこの絵のような仕組みが隠されているのですね。
・槽内に温湿度センサーを設置。
・その信号を調節器に入力。
・冷却器と加熱器で温度を制御する。
・湿度は加湿器と冷却器(除湿器)で制御している。
ここでちょっと考えていただきたいのは・・・
小さな箱の中に熱い部分、冷たい部分、除湿する部分、加湿する部分がある事。
これは安定する環境を作ることの原理原則からは矛盾しているのです。
だから温度分布も湿度分布も起こしやすいという特質を持ってしまっているのです。
実際にこの絵のような位置でその分布を見てみましょう。
一般的に恒温恒湿槽の世界ではこれを9点測定と呼んでいます。
もちろん、性能確認には規格があるので興味ある方は紐解いてみてください。
「IEC 60068-3-5 温度試験槽の性能確認の指針など」
これが実際に計測をした温度の性能を計測した表です。
一般的に大体同じようなフォームで記載されて恒温恒湿槽メーカーから提出されるのですね。
比較的条件の良い20℃設定においても内部の分布は0.3~0.5℃存在します。
縦軸で見ると時間ごとにこれも0.3℃ほど変化していることが分かります。
つまり、温度の制御自体比例制御で行っているので、
安定と分布などが重なって最大幅で0.8℃変わっていることが確認出来ます。
性能としては槽中央の温度のみを無負荷で平均化して表示しているのでよく見えてしまうのです。
お次は湿度です。
相対湿度の場合・・・温度分布により相対湿度が1番影響されます。
これには一定の関係があって1℃温度が上昇すると湿度は3%降下する。
従って最大幅で0.8℃変わっていることより・・・・
0.8℃?3%=2.4%の変化があることになります。
理論的には小さくすみそうなのですが・・・
表を見てみるとかなり大きな分布が存在します。
特に条件の良いと思われる槽中央の位置が高く表示しています。
加湿する場合、槽内の奥下にパンに水が張ってあるのですが、
この加湿によりどうしても分布は大きくなるようです。
非常に面白いデータであります。
これを知った使用者の方が温湿度センサを使って実測する気持ちが分かりますね。
そのような時に使われるセンサはこちらが多いので紹介しますね。
→計測用温湿度センサ
さて、最後に恒温恒湿槽の温湿度設定範囲を見てみましょう。
パンに水が張ってある構造上・・・
自然と水が揮発してしまうことから低温・低湿が苦手です。
除湿器と組み合わせして行う方法もあるのですが、
あまり良いデータは取れていないと聞いています。
これに対し全く違うアプローチを次に記事に書きますのでお楽しみに!