湿度を極める・・・気象庁のアメダスに第一科学製品が採用されました!

私の温度・湿度に関わる仕事の中で・・・
どうしても参画したかったものがあります。
それが気象庁のアメダスなのです。
最近では異常気象の影響なのか災害が増えていて、
天気を予想すること自体が重要になってきました。
アメダスはその基幹システムと言えると思います。
ほとんどの方がアメダスという言葉は知っていると思いますが、
ここで簡単に説明をしたいと思います。
・アメダスとは
気象庁のアメダス(AMeDAS)とは「Automated Meteorological Data Acquisition System」
の略で、「地域気象観測システム」といいます。
気象状況を時間的、地域的に細かく監視するために、降水量、風向・風速、気温、湿度の
観測を自動的におこない、気象災害の防止・軽減に重要な役割を果たしています。
現在、降水量を観測する観測所は全国に約1,300か所(約17km間隔)あります。
このうち、約680か所(約21km間隔)では降水量に加えて、風向・風速、気温、湿度を観測
しています。
実は昨年までアメダスの観測では4要素という風向・風速、気温、日照での観測でした。
それがついに念願の「湿度」が観測の仲間に加わったのであります。
ちなみに日照が無くなり→湿度になったわけですが・・・
日照は気象衛星「ひまわり」にて上空から雲を観測することで推定できるようです。

掲載元記事: https://applestream.jp/7501/

ちょうどとても分かりやすい動画を見つけましたので紹介致します。
こちらは青森県弘前市のアップルストリームさんが提供している動画です。
青森地方気象台の方が解説をされています。
ちなみにこのサイトでは弘前の色々な情報を見ることが出来・・・
私的にはそちらを見るのも楽しかったですね。
湿度がアメダスの観測に加わったわけですが、次の絵で簡単に説明しますね。
最近よく聞く言葉に「線状降水帯」というものがあります。
気象庁では6月から「「線状降水帯に関する情報」を提供することを決めています。
・線状降水帯とは
「線状降水帯」は、次々と発生する発達した雨雲(積乱雲)が列をなした、組織化した
積乱雲群であり大雨を長時間降らせるのを特長とする現象を生じる。
去年、熊本県で球磨川が氾濫した「7月豪雨」など、近年、大きな災害をもたらす
大雨の要因となっています。
この現象を生じる原因の一つが海上や地上の暖かく湿った空気なのです。
お題に「気象庁のアメダスに第一科学が採用されました!」と書きましたが、
実はこのアメダスの気象測器を第一科学が提供しているのです。
実際に納入するのがこの電気式温度計・電気式湿度計・強制通風式通風筒であります。
電気式温度計・電気式湿度計はこちら
強制通風式通風筒はこちら
開発から採用まで4年もかかりましたが、
明治の時代から観測を続けている気象測器に採用いただくのは、
石橋を何回も叩く慎重さが必要なのですね。
開発の略図は次の通りです。
2017年 国内3か所での温湿度計の実証試験開始。
2018年 強制通風式通風筒試作機開発
2019年 温湿度計及び強制通風式通風筒を設置しアメダスデータとの比較観測スタート
2020年 ・大型恒温恒湿室にて鏡面冷却式露点計との比較実験
      ・大型風洞での対強風試験(60m/s)
      ・強制通風筒内ファンの強風による逆回転確認試験
      ・人工太陽による照射角温度上昇試験
      ・強制通風式通風筒に関する特許取得
これには色々な方のご協力が必要だったわけで・・・
あらためてご協力頂いた方にはお礼申し上げます。
ちなみに採用に至った電気式温度計・電気式湿度計・強制通風式通風筒の特長は
次のようなものです。
①温湿度における経年変化の少なさと精度
②湿度のセンサ部が簡単に取り外しでき交換が簡単。
③通風筒の材質にSUS316を採用し錆などがほぼ起こりにくい。
④工具を使わず清掃から部品交換が可能・・・
 従来のメンテナンス時間2時間から20分に短縮。
 (実はこの特許を取った通風筒の構造が大きかったと思っています)
⑤経年変化の少ない断熱材を採用。
最後にこれを維持管理する方の為に・・・
清掃方法や部品交換の方法をすべて動画で配信しております。
こんな積み重ねが実を結んだと思える今日この頃です。
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湿度を極める・・・高磁場環境・高電圧環境下での温湿度計測とは

ちょっと特殊な環境下で温湿度測定をしたい方もいらっしゃると思います。

具体的には・・・・
高周波や高電圧環境下での計測、高磁場環境、
食品調理(電子レンジ等)、送電線近郊、大型変圧器近辺・・・
さらに放射線では、
アルファ線、ベータ線、中性子線、ガンマ線、エックス線などなど。

この環境下での温湿度計測は難しいのです。

それは何故かというと・・・
温度センサ・湿度センサが金属・高分子素材を利用しているからなのですね。


信号線が火花を飛ばしたり・・・
温度センサ・湿度センサが短期で劣化したりとそのまま使用する事が出来ません。
(写真は線香花火ですが・・・笑)

でも、温度計でこんな製品が出来た事で計測の道が開けています。


それがこの蛍光式光ファイバー温度計であります。

原理は光ファイバーの先端に感温部(蛍光物質)を取り付ける事で、
この蛍光物質の温度的な光の減衰を光ファイバーを通して捉えます。

それを複数の温度域で検量線を求め温度換算するのですね。


スペックもキャリブレーションをすれば±0.5℃と充分使える精度です。
私的には物理的に測れない領域で測ることが出来ることの方が重要だと思ってしまいます。

そして、湿度ですがそちらもちょっと工夫がいります。
湿度のとても面白い特性として湿度換算ができる事です。

一般的な相対湿度計はその場で温度と共に湿度を計測する必要があります。
(相対湿度は温度1℃変化すると相対湿度は約3%変化する)

でも、絶対湿度や露点温度で計測すると温度による影響が消えるので、
その空間の空気をサンプリングすることが出来ます。
このサンプリングによる湿度計測は高精度の湿度標準で湿度の値付けをする時も行っています。


その具体例からちょっと解説しましょう!

医療で使われるMRI装置は被験者に高周波の磁場を与えます。
この環境で普通の温湿度計は使えません。

そこで前述の蛍光式光ファイバー温度センサで温度を測り・・・
テフロンチューブを使って温度センサ近くの空気をサンプリングするのです。

計測室ではサンプリングの配管途中に露点センサを挿入した治具を付け、
その露点計からの露点温度と蛍光式光ファイバー温度計の温度から、
相対湿度を演算して求めます。

これによりMRI装置近辺の温湿度を演算できるのですね。

図では鏡面冷却式露点計を使用していますが、
精度の良い温湿度計でも実現可能になります。

この方式はいろいろな所で応用することが出来ます。
・湿度センサを入れることのできない高温(150℃以上)の環境。
・粉塵などのとても多い条件の悪い環境。

ぜひ、こんな環境で測りたいような希望がありましたらお問い合わせください。

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新型コロナウィルスと湿度について

新型コロナウィルスに関しては、まだまだ分からないことが多く、

今までの通説を含めコメントするのはとても難しいのです。

ただ、温度湿度に関しては個人意見ではありますが、

ここでちょっとまとめてみたいと思った次第です。

この表は今まで広く引用されてきた室内環境(温度・湿度)による

インフルエンザウィルスの生存率を示したグラフです。

温度が高く湿度も高い環境ではより短時間でウィルスが生存しなくなるのです。

特に日本では冬場に感染が集中がすることから信じられてきたのですね。

ただ、新型コロナウィルスに関しては不明な点も多くあることから、

楽観的に夏には感染が治まるという事が疑問視されています。

 

ところが最近、アメリカ国立衛生研究所などの研究グループは、

新型コロナウイルスについて「エアロゾルという状態にした場合、

3時間が過ぎてもウイルスは生存していました。」と報告。

比較的このグラフのイメージに近い印象を受けたのです。

今後、温度湿度条件における生存の研究もされるそうなので、

湿度の仕事をしている私としてはとても興味があるところです。

会社では現在、無菌状態で湿度を発生できる調湿装置の開発を進めており、

この装置が同様の試験のお手伝いが出来ればと思った次第です。

 

室内で湿度を適度に保ちたい場合には加湿器が有効であります。

そこで室内の加湿方法として代表的な原理を図にしてみました。

少し前から気になっているニュース記事に次のような文があります。

「空気中の水分が高いと、その水の粒に、塵や埃と共にウィルスもくっついて床に落ちます。」

もしくは「加湿器を使うとその水の粒に、塵や埃と共にウィルスもくっついて床に落ちます。」

これに関しては私は疑問を持っていて本当かどうかちょっと意見したいと思います。

 

➀加熱式加湿器・・・ヒーターで水を100℃の蒸気にして噴霧する方式(沸騰)

高温の蒸気は数十センチで拡散し気化します。
ほとんどの場合、上部方向に噴霧され分子レベルまで拡散されるので、
床に落ちることはありません。

ここで空気中の水の分子の動きを解説すると、

分子の運動はとんでもなく早いと言うことです。

知り合いのトライポロジーの先生が計算したところによると・・・

気体中において金属面の金属の原子に衝突する水の分子の衝突回数は、

1秒間に2万回という計算が得られたそうです。(超高速!)

この事からも落下効果は期待できないと思ってしまいます。

(ただし、吹出し口の温度は100℃近くと高いのでウィルスを減らす効果は期待できそうです)

 

②気化式加湿器・・・水を吸い上げたフィルターに風を当てることで蒸発させる方式

厳密には水が蒸発によって気化するときに蒸発潜熱により温度が下がります。

これが加湿器より送風されると温度が低いので、加湿した空気は重く下の方に行きます。

暖かい空気が上に行き、冷たい空気が下に行く事と同じですね。

ただ、下がる温度はせいぜい数℃レベルなのですぐ室温になじんでしまいます。

蒸気の水の分子がとんでもなく早いと言うことから考えると、

床に落ちる可能性はとても低いと思います。

 

③超音波加湿器・・・超音波振動子により常温の水を霧化させ、送風機で拡散させる方式

物理的に霧化させるので、出てきたものはミストです。

これはまだ水の状態なので重く床に落ちることがあります。

この加湿器を床に置くと周りが濡れるのを経験したことがありませんか?

そう、私としてはこの超音波加湿器のみが床に落ちる可能性があるという見解ですね。

 

どちらにしろ、室内の湿度は高く保つのをお薦めするのですが、

ウィルスの感染力を弱めるためだけでなく・・・

身体の防御機能を高めるために有効だと言うことも重要です。

身体の防御機能のひとつである鼻腔粘液線毛輸送機能を維持するため、

湿度は重要なのですね。

呼吸によって体内には極小の異物や細菌が入ります。

それら異物を外部へ追い払い気管支をきれいに保つ働きをしているのが、

粘液上皮細胞の線毛だそうです。

線毛運動は湿度が高く、体の水分が高い方が活発に機能します。

なんでもスポーツドリンクなどのイオン飲料を飲むと、

低い湿度環境で鼻腔の線毛運動の低下を抑制するらしいです。

湿度を極める・・・湿度100%とは

ここ連日、雨が続いている梅雨であります。

7月2日、突然のご依頼を受けNHKさんの取材を受けた次第です。

その日の夕方放映されたテーマは「湿度100% どういう状態?」

たしかに最近の気象庁の予想では湿度100%と報道しています。

上の画像はNHKさんのHPからの引用です。

HHKさんのニュースのアドレスはこちら。
https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20190702/1000032236.html
(2019/12 現在、リンク先はありません)

短時間で解説するのは難しい・・・

改めて勉強を続けなければと思った次第です。

 

 

 

 

 

 

湿度を極める!・・・毛髪式自記記録計のお話し

最近、毛髪式自記記録計についてご質問をされたので、

ここで少しお話しをさせていただきます。

この毛髪式自記記録計は湿度-測定方法(JIS Z 8806)では、

毛髪湿度計という名称になっています。

1783年にスイスのソーシュル氏によって発明されたのですから、

現役の湿度計とすれば最古に分類されます。

アスマン通風式湿度計は1880年なのでちょっと驚いてしまいますね。

 

毛髪式自記記録計の原理は毛髪の湿度による伸縮と連動し・・・

ドラム状になった記録紙上を指針の先のペンによって記録を行ないます。

同時にバイメタル等で同様に温度を記録する機能をもち、

一般的には自記二段記録計と呼ばれています。(温度と湿度で二段、自分で記録するから自記)

注意点は以下の通り。

・毛髪が汚れていると指示のくるいが生じる。
・低湿度での長時間放置は避ける。
・30%RH以下で正確な湿度測定は困難である。
・風圧がかかると指示に狂いが生じる。
・60℃以上での使用は避ける。
・有機溶剤が存在する雰囲気では使用できない。
・校正は、標準湿度計との比較により調整を行なう。

「校正は標準湿度計との比較により調整を行なう」とされているので、

定期メンテナンスが必要なのであります。

さらにメーカーによっては試験成績書や気象庁検定付きなどがありますが、

発送に宅急便を使うと振動で目盛りが当然狂う可能性があり、

力学的な湿度計なので疑問が残ります。

 

写真:アムステルダム国立美術館(蘭: Rijksmuseum Amsterdam)

 

日本では美術館や倉庫等の管理用として数多く販売されている毛髪式自記記録計。

なぜ、電子式湿度センサを使用した記録計に変わらないのでしょうか。

その理由としては紙を使った記録計の衰退とデータロガの普及と関係があります。

機構が機械的な毛髪式自記記録計は安価で製作できますが、

センサと紙を使った記録計との組み合わせはコスト高・・・

したがって最近は小型ロガに切り替わっているのですが、

記録紙に残るというのは改竄が出来にくいため好む方がいるのですね。

 

有名なレンブラント・『夜警』(1642)

海外の絵画の多くはそのまま展示されています。(盗難や事故があったものは別)

美術館をまわるとちょっと驚きます。

海外の美術館は歴史ある建物で大きく広いため環境変動も少ないのでしょうか。

 

それに対し日本ではケースに入れられる場合が多くあります。

それの考察が次のグラフです。

 

左が電子式湿度センサを使って計測をした例と、

右が毛髪式自記記録計を使って計測した例。

昔、ゴッホのひまわりが日本に来たときに計った時・・・

このような感じになったのですね。

毛髪式自記記録計は応答性や感度が悪いために、

絵画にとって非常に良いデータが取れています。

しかしながら日本の美術館の多くは空間が狭く、

空調機が常時制御している状態が多いのです。

当時は20分から30分の間隔で温湿度が変化しておりました。

これにより湿度衝撃という現象が起こり、

絵画自体に短期の延び縮みが起こるため劣化が促進します。

これを防ぐためにアクリル等のカバーを空調干渉、

紫外線カットを目的として設置するのです。

どちらにしろ毛髪式自記記録計を単独で使うのにはリスクを生じます。

 

ちなみに相対湿度の場合・・・

温度が1度上がると湿度は3%下がります。

湿度変化の起因は温度変化が元とも考えられるのですね。

 

少々長くなりましたが、

毛髪式自記記録計の伝説的キーワードについて、

最近、思いついたことを書きます。

「毛髪式自記記録計の毛髪はフランス人の処女の方の毛髪の特性が良い」

僕も長らく湿度に関わって不思議だと思う言葉なのですが、

先日、この世界遺産である富岡製糸所に行って気が付きました。

 

製糸所の中ではお湯を炊き絹糸を取ります。

当然、湿度は高湿になるために上部の建物には、

抜くための特殊な形状の屋根にしているそうです。

明治5年、明治維新直後に明治政府が日本の近代化のために設立した模範器械製糸場です。

あの西郷どんがまだ政府の中核にいるころの話なので驚きます。

この時、日本には製糸に関しての知識が少なく、

招いたのが当時、製糸の先端を行っていたフランスの技師オーギュスト・バスティアンさん。

繭から糸を取る繰糸器もフランスから取り寄せています。

繰糸器の技術には湿度計測が欠かせないため、

フランスで毛髪式自記記録計が進化したのではないのでしょうか?

色々な毛髪を試した結果・・・

「毛髪式自記記録計の毛髪はフランス人・・・」という結論に繋がったと思う次第です。

「エジソンの白熱電球は京都の八幡村にある竹をフィラメントに使った。」これに似ています。

ちなみに現在は馬のしっぽの毛を20~30本束ねていると聞いております。

面白いですね。

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湿度を極める!・・・潜熱についてのあれこれ

夏の暑い日に水を撒くという習慣が昔はありましたね。

エアコンの普及からあまり見られなくなりましたが、

なかなか趣のある風景でありました。

 

この水を撒くという目的ですが・・・

単に冷たい水で道路を冷やすということでは無く、

水が蒸発するときの気化熱により温度が下がるという物理現象を利用しているのです。

暑いと汗をかくことも同じように体温を下げる目的なので、

とても合理的だと思うのです。

 

さて、この潜熱という現象は水に深く関わります。

 

気体、水、氷の状態と熱の種類を表したものがこちらです。

液体から気体、あるいは固体から液体に変化するためには、

外部から熱を加える必要があるのです。

身近な所ですと氷を入れて攪拌する水はほぼ0℃で一定温度を保持するし、

大気圧中で沸騰している水は約100℃を保持します。

こんな感じで熱エネルギーが物質の構造変化に姿を変えるために、

見た目の熱変化を伴わず保持することから・・・

”潜って目に見えない”熱変化という意味で潜熱と呼ぶのですね。

 

温度をゆっくり下げていって正確に温度を測ったグラフがこちら。

0℃のところでちょっと保持することが分かりますね。

 

さて、湿度における潜熱という現象をちょっとご紹介しましょう。

1番よく使う言葉が蒸発潜熱です。

蒸発潜熱とは液体状の物質(水)が気体状の状態(水蒸気)に変化する時に必要な熱を指します。

 

この現象を使って湿度を測定する計測器をアスマン通風乾湿計と呼んでいます。

ドイツ人のアスマンさんが1880年ごろこの素晴らしい発明をしました。

2本の温度計を用意して1本にガーゼを薄く巻きます。

そちらを水で湿らすことで気化熱により温度が低くなるのですね。

この温度は周りの湿度によって差が大きくなったり小さくなるため、

気温を測る温度計との温度差で湿度に換算することが出来るのです。

専門的に書くと・・・Sprungの公式を使用して算出するのであります。

 

詳しくはこちらをご覧下さい。

 

ちょっと悩ましいのですが・・・

この優れたアスマン通風乾湿計で使われているのが水銀温度計。

2013年10月に採択、署名された「水銀に関する水俣条約」により、

今後、水銀添加製品や水銀含有廃棄物の処理が容易にできなくなります。

湿度計測分野では(水銀を含有するタイプの)アスマン式通風乾湿計が本条約の対象となり、

2020年から製造および輸出入が「禁止」されることになるそうです。

これを知ったらアスマンさん驚くでしょうね。

 

相対湿度も絶対湿度も計れる私の1番お薦めの温湿度計がこちら→計測用温湿度センサ

もちろん水銀は使いません。笑

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超低湿度をテーマにしたセミナーのご案内

かなり専門的にはなってしまうのですが、

温湿度マイスターの私/武田が講演を依頼されました。

テーマは・・・リチウムイオン電池の製造プロセスにおける・・・

「超低湿度環境の維持、ドライルーム運用、湿度計測」

であります。

講師の方は以下の通りです。

【第1部】西野技術士事務所 所長 工学博士 技術士 西野 敦 氏
元・パナソニック(株) 本社研究所所長
電気化学会・キャパシタ技術委員会 元・委員長

【第2部】 (株)大気社 環境システム事業部 技術統括部 設計部 本岡 義啓 氏

【第3部】 (株)第一科学 執行役員 特機事業部事業部長 武田 秀樹 氏

【第4部】 JFEテクノリサーチ(株) ソリューション本部(千葉)
電池・材料解析評価センター長 島内 優 氏

おお~私を除いて凄い方ばかりです。笑

私も当日は聴講できるので今から楽しみなのですね。

講演内容はこちらをご覧下さい→→→セミナー案内

 

特にリチウム電池解体技術と調査事例、電池材料の微細構造と分析技術など

まさに今が旬の題材。

リチウム電池の不具合におけるリコールなどは毎年のように起こっていますからね・・・

 

ここで技術情報協会さんからのご厚意によりこのブログを読んでいただいた方に特典!

下記の用紙で申し込みを行うと講師紹介特別割引が受けられます。

通常、丸1日食事付きのセミナー60.000円が半額の30.000円になります。

実践的なお勉強からするとお得感があると思います。

 

さて、さて、まずは一生懸命資料を作成しなければと思う今日この頃です。

こちらからダウンロードしてくださいませ。

 

湿度を極める!・・・恒温恒湿槽に違う方法でアプローチ!

いろいろな温度と湿度の環境を作る装置として恒温恒湿槽がありますが、

今回はその続きであります。

この方法で作った私達の装置はより高精度な恒温恒湿槽として・・・

すでに気象庁をはじめとする全国の校正機関で採用されているのですね。

まずはその方法ですが湿度計ー性能試験方法(JIS B 7920)に書かれています。

発生方法としては4種類あると思って下さい。

● 二温度法
● 二圧力法
● 二温度二圧力法
● 分流法

ここで1番使い易い方法の二温度法と分流法を中心に説明しますね。

 

二温度法とは・・・

試験槽より低い温度において水蒸気で飽和された飽和槽内の空気を試験槽へ送る。両槽内の圧力が等しければ、試験槽内の相対湿度は飽和槽内の温度における飽和水蒸気と試験槽内の温度における飽和水蒸気圧の百分率で求められる。試験槽内の設定温度に対して飽和槽内の温度を調節して、所定の湿度の空気を発生させられる。

ちょっと難しい言葉で書かれているのですが、

簡単に言えばある温度で湿度100%を作り、

温度の高いチャンバーに送ることにより任意の湿度を作る方法です。
(温度が高くなると相対湿度が下がるという理屈です)

 

ちなみに飽和槽とはこのように空気(ガス)を細かい泡状にして、

水の中を通すことで加湿する方法です。

水は温度を精度良くコントロールできるので、

加湿器とは違い具合が良いのですね。

 


お次は分流法についてです。

分流法とは・・・

乾燥空気を二つに分流し、一方は飽和槽を通して水蒸気で飽和させた後に二つの流れを混合し試験槽へ送る。
試験槽内の相対湿度は、両槽内の温度及び圧力並びに乾燥空気の分流比から求められるので、この分流比を調整して所定の湿度の空気を発生させられる。

これも簡単に言うと・・・

湿度0%と湿度100%の空気を同じ量だけ混ぜ合わせると、

湿度は50%になるというものです。

この割合を変えることでほぼ全域で湿度がコントロールできるのです。

 

このような方法を使ってチャンバーに湿度を送り込むのですが、

チャンバーの方の温度コントロールも一工夫しています。

 

それがこの水を循環する方法です。

温度が0℃以下、100℃以上の場合は水以外の熱媒を使います。

もちろん・・・チャンバーを水に水没させる方法もありですが、

試料やセンサを出し入れするにはこれが良かったのですね。

 

当ブログの運営母体である第一科学では、

上の二つの発生方法を組み合わせて装置をマニアックに作り込んでいます。

そのフロー図がこちらです。

この発生装置(二温度分流法)は原理的には簡単なのですが制御が複雑なため、

様々なノウハウがこの中ににあるのです。

この装置の特長を2つほど紹介しましょう。


まずは一つ目ですが・・・

前記事で書いた恒温恒湿槽はPID制御を採用しています。

この制御のトレンドとしては左のような傾向になります。

設定値に対し差が徐々に小さくなる感じになります。

特にこれが顕著に表れるのが高湿域ですね。

いわゆる天井(100%rh)がある為に結露が生じ易かったりします。

 

それに対して二温度分流法では定まった湿度をチャンバーに送り込む為、

オーバーシュートがありません。

設定値に綺麗に近づくトレンドを得ることが出来るのです。

しかも安定性にも優れています。

 

 

二つ目の特長がこちらです。

恒温恒湿槽では実現できない温度と湿度の領域が可能になります。

特に氷点下環境試験には有効だと考えています。

 

興味のある方は一度、こちらを見て下さいませ!

 

氷点下でも環境試験が出来る装置→こちら

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湿度を極める!・・・恒温恒湿槽とは?

いろいろな温度と湿度の環境を作る装置として恒温恒湿槽があります。

これがとても便利な箱で・・・

部品の耐久性試験、薬などの保存安定性試験、いろいろな研究開発などにも使われているのですね。

日本の製品は壊れないという定説の陰には、

この恒温恒湿槽という存在が欠かせないのであります。

特に自動車業界ではこのような装置を5000台以上所有している会社もあるので、

ちょっと驚いてしまいます。

 

話は脱線しますがこの恒温恒湿槽の恒の字を調べてみると・・・

①いつでも変わることなく同じであること。永久不変であること。
②いつもそうであること。ふだん。平素。
③昔からそのようになるとされていること。当然の道理。ならい。ならわし。

と書いてありました。

「いつもそうであること」はまさに温度と湿度の環境を一定にする事に通じていますが、

ここでちょっと意地悪な解釈をしてみますね。

「昔からそのようになるとされていること」という言葉。

これを「本当に今のままで良いの?」という切り口で解説してみます。

 

まずは恒温恒湿槽の仕組みを見てみましょう。

扉を開けて中を覗いてみると奥に空気の取り入れ口と吹き出し口が見えます。

実はこの奥にこの絵のような仕組みが隠されているのですね。

・槽内に温湿度センサーを設置。
・その信号を調節器に入力。
・冷却器と加熱器で温度を制御する。
・湿度は加湿器と冷却器(除湿器)で制御している。

ここでちょっと考えていただきたいのは・・・

小さな箱の中に熱い部分、冷たい部分、除湿する部分、加湿する部分がある事。

これは安定する環境を作ることの原理原則からは矛盾しているのです。

だから温度分布も湿度分布も起こしやすいという特質を持ってしまっているのです。

 


実際にこの絵のような位置でその分布を見てみましょう。

一般的に恒温恒湿槽の世界ではこれを9点測定と呼んでいます。

もちろん、性能確認には規格があるので興味ある方は紐解いてみてください。

「IEC 60068-3-5 温度試験槽の性能確認の指針など」

 


これが実際に計測をした温度の性能を計測した表です。

一般的に大体同じようなフォームで記載されて恒温恒湿槽メーカーから提出されるのですね。

 

比較的条件の良い20℃設定においても内部の分布は0.3~0.5℃存在します。

縦軸で見ると時間ごとにこれも0.3℃ほど変化していることが分かります。

つまり、温度の制御自体比例制御で行っているので、

安定と分布などが重なって最大幅で0.8℃変わっていることが確認出来ます。

性能としては槽中央の温度のみを無負荷で平均化して表示しているのでよく見えてしまうのです。

 


お次は湿度です。

相対湿度の場合・・・温度分布により相対湿度が1番影響されます。

これには一定の関係があって1℃温度が上昇すると湿度は3%降下する。

従って最大幅で0.8℃変わっていることより・・・・

0.8℃?3%=2.4%の変化があることになります。

理論的には小さくすみそうなのですが・・・

表を見てみるとかなり大きな分布が存在します。

特に条件の良いと思われる槽中央の位置が高く表示しています。

加湿する場合、槽内の奥下にパンに水が張ってあるのですが、

この加湿によりどうしても分布は大きくなるようです。

非常に面白いデータであります。

これを知った使用者の方が温湿度センサを使って実測する気持ちが分かりますね。

 

そのような時に使われるセンサはこちらが多いので紹介しますね。

計測用温湿度センサ

 

 

 

 

 

 


さて、最後に恒温恒湿槽の温湿度設定範囲を見てみましょう。

パンに水が張ってある構造上・・・

自然と水が揮発してしまうことから低温・低湿が苦手です。

除湿器と組み合わせして行う方法もあるのですが、

あまり良いデータは取れていないと聞いています。

 

これに対し全く違うアプローチを次に記事に書きますのでお楽しみに!

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スペイン・世界気象学会に行ってきました。

meteorological2016年9月27日~30日。

気象庁の方に誘われてスペイン・世界気象学会に行ってきました。

僕は民間の人間なので展示会メインの仕事。

発展途上国向けに開発したポータブル湿度校正器Humi Pumpの紹介なのであります。

それにしても海外出張がポーランドに続いてスペイン。

忙しくてブログの更新が出来ませんでした。<m(__)m>

HumiPump1

この展示会の名称が・・・Meteorological Technology World Expo2016。

気候、天候、水理気象の計測、予測、分析技術に特化したイベントです。

世界をリードする航空会社、航空機運航業者、船舶会社、海産/港湾業者、

空港、軍事計画、海洋調査会社、ウィンドファーム運営会社、気象庁、

農産業運営、研究機関に籍を置く方々がこのイベントに集います。

ちなみに気象学会はCIMO-TECO会議という名称。

世界中の学者の方の発表も聴くことが出来ましたよ。

 

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この展示会場はマドリッド。

気候は日本と変わらずに暑いのですが湿度が低くさわやかでした。

毎朝、ホテルから地下鉄に30分ほど乗って通ったのです。

 

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初日の搬入日にちょっとトラブル。

展示ブースも準備されず荷物も届いていませんでした。

いや~ノンビリしておりますの~!

これにはちょっと焦りましたね。

 

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hamu

まあ・・・そんな時は午後から市内見物。

100年以上の歴史のある市場でイベリコ豚の生ハムランチであります。

ちなみにスペインで食べた生ハムは塩分が強くありませんでした。

脂身の部分がとても美味しかった!

日本で食べた生ハムのイメージが変わりましたね。

 

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当日になって荷物も届き無事スタート。

お陰様でHumi Pumpは大好評でしたね。

気象業界は衛星・レーダーなどを使う最先端の研究者から、

発展途上国など普及の遅い地域の研究者の方々と様々。

それぞれ直面する課題が違っています。

実際に行ってみて世界観が変わりましたよ。

 

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そうそう韓国の展示も凄かったです。

国が牽引している為に統一感があります。

これは他の国には無かったところですね・・・

日本から参加した会社は10社もあったので、

いつかオールジャパンで出してみたいと皆々様言ってました。

 

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英弘精機さんは日射計のメーカー。

とても綺麗なブースでしたね。

 

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明星電気さんはラジオゾンデを出展。

日本の気象技術を支えているメーカーさんだけあって、

説明員の方もワールドワイドの印象がありました。

 

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CIMO-TECO会議で気象庁の方も発表しました。

その中でHumi Pumpを使った発展途上国向け技術供与の例も発表。

なんか・・・

自分たちの小さな技術が世界気象の役に立っていると考えて嬉しくなりましたよ。

 

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中日でWMOヴィルホ・ヴァイサラ教授賞の授賞式がありました。

「これは1985年にヴィルホ・ヴァイサラ教授賞が設立されました。
この賞は世界気象機関(WMO)が運営し、気象観測の手法と設備に
関する気象学研究に対する関心を高めることを目的として授与されています。
優れた研究論文を表彰し、賞金、メダル、賞状が授与されます。」

気象業界では現在TOPの企業さんですが、

創始者はほんと偉かったのですね。

主に発展途上国の研究者に送っているそうです。

 

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遠くスペインまで行ってきましたが、

とても印象に残る出張でありました。

当初は治安が心配でしたが不安にはなりませんでしたね。

親日の方も多く・・・

今度は休暇で行きたいと思った次第です。

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