湿度を極める!・・・毛髪式自記記録計のお話し

最近、毛髪式自記記録計についてご質問をされたので、

ここで少しお話しをさせていただきます。

この毛髪式自記記録計は湿度-測定方法(JIS Z 8806)では、

毛髪湿度計という名称になっています。

1783年にスイスのソーシュル氏によって発明されたのですから、

現役の湿度計とすれば最古に分類されます。

アスマン通風式湿度計は1880年なのでちょっと驚いてしまいますね。

 

毛髪式自記記録計の原理は毛髪の湿度による伸縮と連動し・・・

ドラム状になった記録紙上を指針の先のペンによって記録を行ないます。

同時にバイメタル等で同様に温度を記録する機能をもち、

一般的には自記二段記録計と呼ばれています。(温度と湿度で二段、自分で記録するから自記)

注意点は以下の通り。

・毛髪が汚れていると指示のくるいが生じる。
・低湿度での長時間放置は避ける。
・30%RH以下で正確な湿度測定は困難である。
・風圧がかかると指示に狂いが生じる。
・60℃以上での使用は避ける。
・有機溶剤が存在する雰囲気では使用できない。
・校正は、標準湿度計との比較により調整を行なう。

「校正は標準湿度計との比較により調整を行なう」とされているので、

定期メンテナンスが必要なのであります。

さらにメーカーによっては試験成績書や気象庁検定付きなどがありますが、

発送に宅急便を使うと振動で目盛りが当然狂う可能性があり、

力学的な湿度計なので疑問が残ります。

 

写真:アムステルダム国立美術館(蘭: Rijksmuseum Amsterdam)

 

日本では美術館や倉庫等の管理用として数多く販売されている毛髪式自記記録計。

なぜ、電子式湿度センサを使用した記録計に変わらないのでしょうか。

その理由としては紙を使った記録計の衰退とデータロガの普及と関係があります。

機構が機械的な毛髪式自記記録計は安価で製作できますが、

センサと紙を使った記録計との組み合わせはコスト高・・・

したがって最近は小型ロガに切り替わっているのですが、

記録紙に残るというのは改竄が出来にくいため好む方がいるのですね。

 

有名なレンブラント・『夜警』(1642)

海外の絵画の多くはそのまま展示されています。(盗難や事故があったものは別)

美術館をまわるとちょっと驚きます。

海外の美術館は歴史ある建物で大きく広いため環境変動も少ないのでしょうか。

 

それに対し日本ではケースに入れられる場合が多くあります。

それの考察が次のグラフです。

 

左が電子式湿度センサを使って計測をした例と、

右が毛髪式自記記録計を使って計測した例。

昔、ゴッホのひまわりが日本に来たときに計った時・・・

このような感じになったのですね。

毛髪式自記記録計は応答性や感度が悪いために、

絵画にとって非常に良いデータが取れています。

しかしながら日本の美術館の多くは空間が狭く、

空調機が常時制御している状態が多いのです。

当時は20分から30分の間隔で温湿度が変化しておりました。

これにより湿度衝撃という現象が起こり、

絵画自体に短期の延び縮みが起こるため劣化が促進します。

これを防ぐためにアクリル等のカバーを空調干渉、

紫外線カットを目的として設置するのです。

どちらにしろ毛髪式自記記録計を単独で使うのにはリスクを生じます。

 

ちなみに相対湿度の場合・・・

温度が1度上がると湿度は3%下がります。

湿度変化の起因は温度変化が元とも考えられるのですね。

 

少々長くなりましたが、

毛髪式自記記録計の伝説的キーワードについて、

最近、思いついたことを書きます。

「毛髪式自記記録計の毛髪はフランス人の処女の方の毛髪の特性が良い」

僕も長らく湿度に関わって不思議だと思う言葉なのですが、

先日、この世界遺産である富岡製糸所に行って気が付きました。

 

製糸所の中ではお湯を炊き絹糸を取ります。

当然、湿度は高湿になるために上部の建物には、

抜くための特殊な形状の屋根にしているそうです。

明治5年、明治維新直後に明治政府が日本の近代化のために設立した模範器械製糸場です。

あの西郷どんがまだ政府の中核にいるころの話なので驚きます。

この時、日本には製糸に関しての知識が少なく、

招いたのが当時、製糸の先端を行っていたフランスの技師オーギュスト・バスティアンさん。

繭から糸を取る繰糸器もフランスから取り寄せています。

繰糸器の技術には湿度計測が欠かせないため、

フランスで毛髪式自記記録計が進化したのではないのでしょうか?

色々な毛髪を試した結果・・・

「毛髪式自記記録計の毛髪はフランス人・・・」という結論に繋がったと思う次第です。

「エジソンの白熱電球は京都の八幡村にある竹をフィラメントに使った。」これに似ています。

ちなみに現在は馬のしっぽの毛を20~30本束ねていると聞いております。

面白いですね。

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