温度を極める!その2の2・・・熱電対温度センサを原理から考えてみる。

kidennryoku

サーミスタと白金測温抵抗体の次は広く普及しているのが熱電対です。

熱電対の温度センサは「2種類の異なる金属で閉回路を形成した時、

2箇所の接合点に温度差が生じると起電力(電圧)が生じる」という原理を利用したものです。

この現象をゼーベック効果と言います。

 

ゼーベック効果
ゼーベック効果により端子D1−D2間に電圧(熱起電力)V1が発生します。
ゼーベック効果による熱起電力V1はC点(測温接点)とD点(基準接点)の
温度差 ΔT (=T1−T2)に対応して発生するものであり、
JISなどの規格に「規準熱起電力表」として掲載されています。

 

netudenntui

具体的にどんな感じかと言うと・・・

たとえばTタイプの熱電対は線の一本が銅、もう一本がコンスタンタンという金属を使います。

(コンスタンタンは銅55%ニッケル45%の組成からなる合金なのです。)

この接点の部分を100℃のヤカンに触れさせ、

反対側の接点を氷に触れさせると・・・なんと4.279mVという電圧が発電されます。

つまり、このほぼ直線的な特性を生かして電圧を測ることにより、

温度に換算したのが熱電対温度計の原理なんですね。  (写真はK熱電対)

ちなみに25℃だと4.279mV÷100℃✕25℃=1.06975mVてな感じです。

 

さて、ちょっとゼーベック効果が面白いので寄り道してみましょう。

この効果をよく考えてみると超小さな発電所と呼べるのではないでしょうか?

この効果の応用を2つ紹介します。

 

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ひとつはサーモパイルと呼ばれるものです。

これは熱電対をたくさん直列や並列に接続してパイル状(碁盤の目のイメージ)にしたものです。

たくさん使うと起電力も増えて小さな温度変化も見ることが出来るのですね。

 

これを利用して物から温度の高さに応じて出る赤外光をレンズで集光しサーモパイルに当てます。

最近では体温計なのでも利用される放射温度計がこの原理なんですね。

この放射温度計に関してはこの後の記事でまた詳しくご紹介しましょう。

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もう一つの応用が発電鍋です。

とっても面白い会社さんがこのブログのために転載やHPの紹介の許可を頂きましたので、

そちらから引用させていただきます。

株式会社TESニューエナジーさんは(独)産業技術総合研究所の技術移転ベンチャーさんです。

 

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ちょっと画像が小さいのはごめんなさい・・・<m(__)m>

熱電にはP型とN型材料の二種類があり、

それらを接続することで電力を得ることが出来るそうです。

その酸化物熱電モジュールをお鍋の底に設置したのが発電鍋なのですね。

 

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これアウトドアでスマホを充電するのにぴったり。

アウトドア好きの温湿度マイスター 武田の食指が動いてしまいそうです。

 

あの未曾有の東北地方太平洋沖地震でも携帯の充電が問題になりましたね。

先日もテレビでこの発電鍋を使っているアフリカのウガンダの小学校が紹介されました。

夜しか学習する時間がない子供も多くいて、

そのときに必要な明かりを発電鍋とLED照明で作ることが出来たのです。

 

なんとも偉大なゼーベック効果ではないでしょうか?

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温度を極める!その2の1・・・温度センサの種類を原理から考えてみる。

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昨今、パソコンとデーターロガの発達により誰もが気軽に温度計測が行えるようになりました。

でも、温度センサの種類を間違えたり誤差要因(計測ノウハウ)を知らないと、

全く違う結論に結びついたりもするのです。

 

その為に温度センサの種類を解説する事は比較的簡単なのですが、

少し掘り下げてその原理から紐解きたいと思います。

それにより温度計測がより正確により効率的になるのは間違いありません。

 

samisuta

これは僕がキャンプで愛用している温度計。

センサが2本あって外とテントの中の温度を比較する重宝な道具であります。

このセンサがサーミスタなんですね。

サーミスタ
金属酸化物を主原料とし高温にて焼結されるセラミック半導体で、
その製造方法、構造によって各種の形状・特性があり、
温度センサとして各種温度測定、温度補償用など幅広い用途に対応できます。

 

pt

防爆用のケースに収まっているのでちょっとごついです。

普段はもっと細く短いタイプを愛用しています。

白金測温抵抗体
検出部に用いる金属材料には、温度と抵抗の関係が一定であること、
耐食性に優れ経年変化が少ないこと等の理由から白金(Pt)が多く用いられています。
温度に対する抵抗値変化(感度)が小さく、熱電対に必要な基準温接点が
不要なため常温付近の温度測定に有利です。

 

netudenntui

熱電対は先端を圧着溶接してあります。

半田で付けては誤差になるので使ってはダメですよ。

熱電対
熱電対の温度センサは「2種類の異なる金属で閉回路を形成した時、
2箇所の接合点に温度差が生じると起電力(電圧)が生じる」という原理を利用したものです。

 

熱電対は次回に解説することにして、

温度に対し電気抵抗値が変化するサーミスタと白金測温抵抗体の原理から入りましょう。

サーミスタはこれも2種類に分かれます。(計測に使われるタイプ)

・NTCサーミスタ
NTCサーミスタは温度の上昇に対して抵抗が減少するサーミスタです。
・PTCサーミスタ
PTCサーミスタはNTCサーミスタとは逆に温度の上昇に対して抵抗が増大するサーミスタであす。

今回はNTCサーミスタと白金測温抵抗体の温度-抵抗特性を同じグラフ上で表してみました。

 

T-Rtokusei

左の抵抗値のグラフは縦軸が片対数になっています。

すなわち下から10Ω・100Ω・1000Ω・10000Ω・100000Ωの目盛りですね。

これは10Ω・100Ω・1kΩ・10kΩ・100kΩと表せます。

サーミスタに対し白金測温抵抗体の電気抵抗値の変化が小さいですね。

計測器を設計する方から言えば電気回路的に直進性に優れているので、

より精度を出すことが出来るです。

 

サーミスタは桁が10のn乗で変化するので、デジタル回路による処理が必要になります。

安価な温度計に採用される理由はこの原理から来るのですね。

もちろん精度を出すことも出来ます。

身近なところでは体温計ですかね・・・

36℃で値付け(校正)すればその前後では0.1℃程度の精度が可能なのです。

 

そうそう、昔・・・こんなユニークな方に会いました。

貴金属会社から白金を数10㎝購入しその両端の抵抗を100Ωに合わせます。

それを素線のまま綱渡り状態に空中で張っていました。

何の目的かというと・・・空気温度の超高応答性のセンサを自作していたのです。

普通はセラミックの板に巻き付けたりするので、

セラミック部分の熱容量をキャンセルできるんですね。

 

原理を知り尽くせばこんな事も実行できるのが素晴らしいのです。

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温度を極める!その1・・・熱とはなんだろう?

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最近、テレビで有機物と無機物の違いについて放送されました。

ごく普通に聞いた言葉なのですがちゃんとに文字すると答えられませんよね。

超簡単に言えば燃やせば水(水蒸気)と二酸化炭素ができるものです。

専門的に言うと炭素を含む化合物の大部分となるのですが、

一般の方からすると何のこっちゃ?となるわけであります。(写真:プロパンの分子モデル)

 

さらに無機物になると有機物を除いたすべての物質だそうです。

同じ炭素を含んでも二酸化炭素は無機質なので・・・

意外に曖昧なカテゴリー分けのような気がしました。

 

ondo
さて、温度も同じようなことが言えます。

「今、30℃だから暑いね」と普段使いしているものですが、

これも学術的に表現するとビックリするものなのですね。

温度とは物質を構成する分子運動のエネルギーの統計学的な値。

温度には下限が存在し、

分子運動が止まっている状態が温度 −273.15 ℃(絶対零度)です。

 

そうなのです・・・

温度は分子運動がふなっしーのシャカシャカ状態だと高く。

動いていないときは低いというイメージですね。

 

ondo

そこで温度という分子運動のエネルギーを伝える方法として、

大まかに図のような物になります。

物から物へと熱が伝わる熱伝導という現象がそのひとつ。

空気などの気体から物へと伝わる方法もありますね。

この地球でありがたく感じるのが太陽光という光エネルギー波による伝達。

遠赤外でおなじみの赤外光や輻射熱による伝達。

電子レンジなどは温度伝達のイリュージョン。

直接、分子を揺すって発熱するエネルギー波による伝達などたくさんあります。

 

 

温度を極めるシリーズではこのように熱を計る&環境を作り出すをテーマに進めていきます。

手法が多いだけに色々な切り口でご紹介できると思いますのでお楽しみに!

温度を極めることでほんと・・・

古典的な技術から最新のテクノロジーまでがつながりますよ。

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空き缶で風を計る6 農薬散布の巻

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身近では空き缶で風を計る事と農薬散布の問題がわかりました。

農薬散布に関してはドリフト(飛散現象)が問題になります。

これに関しては・・・

『農薬散布時のドリフト防止対策ガイダンス』(ドリフト対策連絡協議会)で定義付けがされています。

目安として風速3m/s以下で散布が可能とされていました。

 

おお、まさに空き缶が倒れた時の風速ですね。

http://www.jppn.ne.jp/nara/drift%20taisaku.htm

 

さらに食品衛生法が改正され、

残留農薬のポジティブリスト制度が平成18年5月29日から施行されています。

http://www.maff.go.jp/j/nouyaku/n_drift/pdf/hisan_tebiki.pdf

 

安全な農作物は当然ですが、公園での除草剤・害虫駆除にも関わる身近な問題です。

ご近所に皮膚の弱い方などがいるとトラブルになるケースもあるようです。

****
空き缶で風を計る方法は無指向性なので風向きに影響はなく、

さらに捉えるのは最大風速値になるのでリスクが減る方向になります。

公園や農地など出来れば囲むようにして4箇所以上の設置が一番効果的だと思いますよ。

***

**

うん。なんか役になった気がしますね。

 

nouyaku2

この情報を開示してから全国からお問い合わせもいただきました。

最後に西日本の農林水産技術総合センターさんからお便りを紹介しますね。

私は現在、仕事の一環で農薬の飛散防止対策に関わっています。
これまで農薬散布時に風が強いと飛散しやすいため風速3m
(木の葉や小枝が動く程度)を超える場合は、
散布しないように・・・と注意を呼びかけていました。
もう少しわかりやすい表現がないかと思っていたところ、
関係者から缶風の話を聞き、誰にでも分かりやすいことから
「缶ビール500ccの空き缶が倒れたら3mを超えているので散布してはダメ」
との表現を使わせて頂いてますので、
発案者?である武田さんに取り急ぎお知らせした次第です。
今後もユニークな取組を期待しております。

自宅に風洞を作ったり大変だったけど・・・報われるな~!

第一科学 温湿度マイスター 武田

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空き缶で風を計る5 フィールドテスト in檜原湖の巻

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さて、缶と風速のデータが出来たのでいよいよフィールドテストを行いました。

場所は福島県の檜原湖であります。

ここのキャンプ場は磐梯山をかすめて来る風が結構強く・・・

私もタープのポールが折れること3回。

試験場所としては最適なキャンプ場ですね。

 

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実際のフィールドテストに使ったのがベーン式風速計。

簡易的に測るのには充分なものです。

この風速計もこの企画に協賛いただいたタスコジャパンさんから用意いただきました。

 

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用意した缶を机の上に置く準備ですが、

そのままだと缶が滑ってしまい倒れません。

そこで厚紙を切りテーブルに張って滑り止めとしました。

 

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この時、水平を確認するのも重要です。

缶と缶との間も50cm以上開けて乱流による相互干渉を防ぎます。

ただし風が一方から吹く場合は平行に並べるように置けば問題ないと思いますよ。

 

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風よ! は~やく来い。

 

hibarako6

しかし・・・予想に反して無風が続きました。

カタン!

やっと確認できたのが空き缶の3~4m/sの倒れです。

まあ・・・こんなものだよね(泣

ちなみに経験では8m/sぐらいの風速でタープが飛ばされたりするので、

150ccの水を入れた缶が倒れたら素直に撤収いたしましょう。

 
次回は農薬散布と空き缶で風を計る関係を記事にしますね。

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