温度を極める!その2の4・・・熱電対温度センサはノイズだらけ

ondobunnpu

当ブログ(温度×湿度×圧力=)の運営母体は第一科学という会社なのですが、

この会社ではマニアな恒温恒湿槽(任意の温湿度を作る箱)を作っています。

どこがマニアかというと・・・

その温度分布性能なんですね。

温度分布が±0.02℃という優れもの。

今回は内部分布の温度計測について語りたいと思います。

写真は温度分布を取るときの温度センサの設置例。

外壁からの熱を切るために断熱材をベースに使っております。

 

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その分布の良いチャンバ内を熱電対センサを使って取ったデータがこれ。

一見、良さそうに見えますが温度幅は0.5℃と大きいのです。

熱電対センサは起電力がmVと小さいのでセンサ自体がアンテナになり電磁波を拾う・・・

つまり、思いっきりノイズが乗っていると断言しちゃいますね。

 

この後、このノイズに関して書きますが、

その前に着目して欲しいのが右下にある茶色の器差表であります。

熱電対を使う前に25℃の水槽に袋に包んだ熱電対の束を入れます。

これにより・・・各センサの器差が分かるのですよ。

9番のセンサが-4℃とちょっと不出来。

ねっ!グラフでもこのセンサの水色の線が外れているでしょう!

この作業・・・大事です。

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お次のグラフが精度の良い白金測温抵抗体のセンサを使ったグラフです。

ノイズが乗らないから綺麗な特性がつかめます。

それでも3つほどちょい外れています。

温度マニアとしてはこの後に風で攪拌したり、熱回しをしたりして・・・

内部分布を立直すのに貴重なデータなんです。

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こちらは全く同じ場所に設置した熱電対温度センサのグラフ。

ノイズが乗っているのでずいぶん違う感じになります。

このグラフからだと7番のセンサのみが問題という結論になるのですよ。

・・・これが怖い(汗

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さらに一歩踏み込んで作ったグラフがこちら。

熱電対温度センサのグラフに移動平均をかけてみました。

少し良くなったと思いませんか?

そう、移動平均は大事です。

ちなみにノイズが乗っているというのは僕の言葉です。

データロガの分解能も関係するので厳密ではないのですよ。

 

温度を征する者は湿度も制す。

by 第一科学 温湿度マイスター 武田

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温度を極める!その2の3・・・熱電対温度センサの零接点補償とは

tanshi

熱電対には零接点補償という言葉があります。

これが色々な意味で知らないと誤差に通じる要因なのですね。

 

熱電対の原理から異種金属間で起電力を生じると説明しましたが、

データロガのこの端子を見るとわかる通り・・・

起電力入力の入り口に異種金属が使われています。

ここをちょっと掘り下げてみましょう。

 

kidennryoku

測温接点Cの温度T1を測定するには基準接点(冷接点)D1、D2を0℃に保ち、

その時の熱起電力を上記の規準熱起電力表を使って換算することにより、

測温接点の温度、したがって測定対象の温度を知ることができます。

つまり片側が0℃にすることでその温度差ΔTが大本になっているのです。

 

でも実際に計測器を0℃にすることは不可能なので、

通常、基準接点D1、D2の温度を実際に0℃に保つ方法はとらずに、

基準接点D1、D2の温度を別途測定して熱起電力V1を補償する方法をとります。

これを冷接点補償と呼んでいるのです。

 

基準接点の温度を測定するには、通常、ダイオードの温度特性を利用したり、

測温抵抗体を使って電子回路で補償します。

冷接点温度はダイオード、測温抵抗体などで直線近似して補償するため、

冷接点温度が変化すると補償誤差が生じます。

特にデータロガなどは色々な熱電対の入力に対応しているので、

補正用の近似式がたくさん必要になり設計の方も大変なのですね。

 

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具体的に一番誤差要因が大きくなる計測例を紹介しましょう。

それが寒冷地試験であります。

 

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寒冷地は氷点下以下の場合が多いので熱電対の起電力も小さいのです。

逆に本体の基準接点D1、D2以降は温度が高く起電力は大きくなります。

実際に測定場所が-20℃、データロガの置かれている場所が5℃だとすると

データロガの液晶などの自己発熱があり・・・

たぶんデータロガ内部は10~15℃ぐらいになると思います。

つまり、温度条件が違う場所が3ヶ所あると考えられます。

 

このパターンが一番誤差として大きく働き、

2℃ほど誤差が生じることがあると温度マニアの方が語っていましたね。

この対策にはどうしたら良いのでしょうか・・・

他の精度の高い温度計との比較が一番良いのではないでしょうか。

 

でも、いろいろあるデータロガーの中で、

構造的に良好な設計をしたメーカーの物もあるのです。

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これは熱電対が一種類のみ入力可能なデータロガー。

端子を熱電対と同材質な物で受けています。

つまりこのまま内部に起電力を運ぶことにより零接点補償を上手に処理しているのですね。

うん。天晴れ!

(写真:安立計器HPより)

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温度を極める!その2の2・・・熱電対温度センサを原理から考えてみる。

kidennryoku

サーミスタと白金測温抵抗体の次は広く普及しているのが熱電対です。

熱電対の温度センサは「2種類の異なる金属で閉回路を形成した時、

2箇所の接合点に温度差が生じると起電力(電圧)が生じる」という原理を利用したものです。

この現象をゼーベック効果と言います。

 

ゼーベック効果
ゼーベック効果により端子D1−D2間に電圧(熱起電力)V1が発生します。
ゼーベック効果による熱起電力V1はC点(測温接点)とD点(基準接点)の
温度差 ΔT (=T1−T2)に対応して発生するものであり、
JISなどの規格に「規準熱起電力表」として掲載されています。

 

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具体的にどんな感じかと言うと・・・

たとえばTタイプの熱電対は線の一本が銅、もう一本がコンスタンタンという金属を使います。

(コンスタンタンは銅55%ニッケル45%の組成からなる合金なのです。)

この接点の部分を100℃のヤカンに触れさせ、

反対側の接点を氷に触れさせると・・・なんと4.279mVという電圧が発電されます。

つまり、このほぼ直線的な特性を生かして電圧を測ることにより、

温度に換算したのが熱電対温度計の原理なんですね。  (写真はK熱電対)

ちなみに25℃だと4.279mV÷100℃✕25℃=1.06975mVてな感じです。

 

さて、ちょっとゼーベック効果が面白いので寄り道してみましょう。

この効果をよく考えてみると超小さな発電所と呼べるのではないでしょうか?

この効果の応用を2つ紹介します。

 

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ひとつはサーモパイルと呼ばれるものです。

これは熱電対をたくさん直列や並列に接続してパイル状(碁盤の目のイメージ)にしたものです。

たくさん使うと起電力も増えて小さな温度変化も見ることが出来るのですね。

 

これを利用して物から温度の高さに応じて出る赤外光をレンズで集光しサーモパイルに当てます。

最近では体温計なのでも利用される放射温度計がこの原理なんですね。

この放射温度計に関してはこの後の記事でまた詳しくご紹介しましょう。

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もう一つの応用が発電鍋です。

とっても面白い会社さんがこのブログのために転載やHPの紹介の許可を頂きましたので、

そちらから引用させていただきます。

株式会社TESニューエナジーさんは(独)産業技術総合研究所の技術移転ベンチャーさんです。

 

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ちょっと画像が小さいのはごめんなさい・・・<m(__)m>

熱電にはP型とN型材料の二種類があり、

それらを接続することで電力を得ることが出来るそうです。

その酸化物熱電モジュールをお鍋の底に設置したのが発電鍋なのですね。

 

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これアウトドアでスマホを充電するのにぴったり。

アウトドア好きの温湿度マイスター 武田の食指が動いてしまいそうです。

 

あの未曾有の東北地方太平洋沖地震でも携帯の充電が問題になりましたね。

先日もテレビでこの発電鍋を使っているアフリカのウガンダの小学校が紹介されました。

夜しか学習する時間がない子供も多くいて、

そのときに必要な明かりを発電鍋とLED照明で作ることが出来たのです。

 

なんとも偉大なゼーベック効果ではないでしょうか?

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