温度を極める!その3の4・・・放射温度計の放射率と外乱の問題
物体から放射される赤外線の放射量は材質や表面状態により顕著な違いがあります。
たとえば同一温度でありながら、
鉄とアルミでは放射する赤外線エネルギー量(放射率)に違いがあるわけです。
これを放射率と呼ぶのですが違う面から言うと・・・
熱放射しやすい物体はそれと同程度に熱吸収しやすく(キルヒホフの法則)、
熱放射と熱吸収の割合である放射率と吸収率は次の関係になります。
放射率=吸収率
日なたに置いた黒い布は太陽熱を吸収しやすいと同時に熱放射もしやすい。
つまり、熱しやすく冷めやすい。
あ~こんな人もいるいる・・・なんてね。
次に物質により大まかに放射率を列挙した表があるのでご覧ください。
これで見るとアルミが一般的に計りにくい材質なのが分かります。
ただし、これは表面の問題なので、
アルミに樹脂のテープなどを貼るという事で解決できます。
あくまでも熱放射される表面の材質によるんですね。
ここで、この表から表面の状態によっても放射率が違うのも分かります。
研磨面と粗面の違いです。
この現象の一番の影響を反射と呼んでいます。
赤外線と温度の関係を定義する理想黒体は、
他からの赤外線をまったく反射しないことを前提としています。
しかし実在の物質は、外部からの赤外線を反射しています。
測定対象が放射する赤外線と、
他の物体から放射され反射した赤外線は区別されることなく、
そのまま測定対象の赤外線エネルギー量として合わせて計測されてしまいます。
鏡面仕上げの金属の温度測定を行う場合、
周りに熱源となる白熱球やヒーターなどの映り込みがあると・・・
実際の温度より高めになるケースですね。
放射温度計が面白いと思うのがアイデア次第で色々なことが出来ることです。
反射に対して透過というのがこの現象。
食品用ラップフィルムは厚みが十数μm程ですが、
これだと薄すぎて透過し反対側の温度を取ってしまいます。
これを利用して放射温度計のレンズの埃避けに使うアプリもあるほどです。
ところがこの写真のようにフィルムに対し鋭角に放射温度計をセットすると、
擬似的にフィルムの厚みを稼ぎ計測する事が出来るのです。
これこそ全方位に放射されるという赤外線の醍醐味と言えるのではないでしょうか?
実際にフィルムの製造工程では高速にフィルムは移動する訳ですから、
非接触という特性を活かした測定方法ですね!