温度を極める!その2の3・・・熱電対温度センサの零接点補償とは
熱電対には零接点補償という言葉があります。
これが色々な意味で知らないと誤差に通じる要因なのですね。
熱電対の原理から異種金属間で起電力を生じると説明しましたが、
データロガのこの端子を見るとわかる通り・・・
起電力入力の入り口に異種金属が使われています。
ここをちょっと掘り下げてみましょう。
測温接点Cの温度T1を測定するには基準接点(冷接点)D1、D2を0℃に保ち、
その時の熱起電力を上記の規準熱起電力表を使って換算することにより、
測温接点の温度、したがって測定対象の温度を知ることができます。
つまり片側が0℃にすることでその温度差ΔTが大本になっているのです。
でも実際に計測器を0℃にすることは不可能なので、
通常、基準接点D1、D2の温度を実際に0℃に保つ方法はとらずに、
基準接点D1、D2の温度を別途測定して熱起電力V1を補償する方法をとります。
これを冷接点補償と呼んでいるのです。
基準接点の温度を測定するには、通常、ダイオードの温度特性を利用したり、
測温抵抗体を使って電子回路で補償します。
冷接点温度はダイオード、測温抵抗体などで直線近似して補償するため、
冷接点温度が変化すると補償誤差が生じます。
特にデータロガなどは色々な熱電対の入力に対応しているので、
補正用の近似式がたくさん必要になり設計の方も大変なのですね。
具体的に一番誤差要因が大きくなる計測例を紹介しましょう。
それが寒冷地試験であります。
寒冷地は氷点下以下の場合が多いので熱電対の起電力も小さいのです。
逆に本体の基準接点D1、D2以降は温度が高く起電力は大きくなります。
実際に測定場所が-20℃、データロガの置かれている場所が5℃だとすると
データロガの液晶などの自己発熱があり・・・
たぶんデータロガ内部は10~15℃ぐらいになると思います。
つまり、温度条件が違う場所が3ヶ所あると考えられます。
このパターンが一番誤差として大きく働き、
2℃ほど誤差が生じることがあると温度マニアの方が語っていましたね。
この対策にはどうしたら良いのでしょうか・・・
他の精度の高い温度計との比較が一番良いのではないでしょうか。
でも、いろいろあるデータロガーの中で、
構造的に良好な設計をしたメーカーの物もあるのです。
これは熱電対が一種類のみ入力可能なデータロガー。
端子を熱電対と同材質な物で受けています。
つまりこのまま内部に起電力を運ぶことにより零接点補償を上手に処理しているのですね。
うん。天晴れ!
(写真:安立計器HPより)