株式会社第一科学

乾湿計

温度を測定する為の計測機器には様々な物があります。その中でも、私達がよくお目にかかる機器について具体的に説明します。

乾湿計(乾湿球湿度計)

湿度計といえば、ほとんどの人が乾湿計(以前は乾湿球湿度計と呼ばれていた)か毛髪式(後程説明)を思い浮かべるほど今までに多く普及しています。

乾湿計には、色々な種類がありますが、構成は右図のような乾球温度計(左側の温度計)と湿球温度計(右側の温度計)、湿球温度計には感温部にガーゼが巻かれ、そのガーゼを湿らす為の水を入れるポットが取り付られています。水の蒸発は、それに接している空気の相対湿度により異なり、相対湿度が100%RHであれば、水は蒸発しません。水が蒸発するとき、その周囲の温度は低下します。その水の蒸発によって下がった温度を測定(湿球温度)し、乾球温度との温度差により相対湿度を算出します。こういった乾湿計を使用する場合、いくつかの制限、問題点があります。

乾球温度計(左側)と湿球温度計(右側)

湿球の凍結

理論的には0℃以下の湿度(温度)を測定することはできますが、湿球温度は水を使用しますので、当然0℃以下では水は氷結(凍結)します。凍結すると、水がガーゼを伝わって移動(毛細管現象)ができず、湿球への水の補給が十分行われません。その為、精度の高い測定、測定器によっては、測定すらできないものもあります。

風速の影響

洗濯物が風の強い日にはよく乾くことからも想像できるように、水の蒸発は風量と風速により異なり、乾球温度と湿球温度の温度差にあらわれます。但し、ある風速以上では風速が少しくらい変化しても、湿球温度の低下は変わらなくなるという実験結果が出ています。正確な湿度測定をする為には、2~5m/sec以上の風速が必要だということを覚えておいて下さい。

放射等、他からの温度の影響について

乾球温度計は、空気の温度を測定する為のもので、その空気は熱伝導度が小さく、放射に対しても透明である為に影響を受けやすくなっていますので、直射日光が温度計の感温部にあたると空気の温度が正しく測れなくなります。また、温度計の目盛りを読むときに、あまり目(顔)を近づけると、その人の体温による温度上昇や呼吸により生じる水蒸気が影響し、これも正確な測定を妨げる要因の一つとなります。

湿球温度計のガーゼについて

湿球温度計の感温部に巻きつけるガーゼについても測定に影響を受ける要因があります。
まず、第1にガーゼの汚れ。ガーゼに不純物が混じると水の飽和水蒸気圧が変わり、計算上での誤差が生じますので、ガーゼが汚れたり、固くなってしまった場合は、洗う、もしくは新しいものと交換する等の処置を行なって下さい。
第2にガーゼの巻き方。ガーゼが何重にも巻かれると、ガーゼの表面温度と湿球温度計の感温部との間に温度差が生じ、正確な湿球温度を測定していることになりません。
また、ガーゼと感温部の間にすき間があると、同様に誤差の要因となります。ガーゼは必ず一重に、また感温部とのすき間がないように巻いて下さい。一例として、このガーゼの二重巻や汚れによる影響を実験したデータを記載します。

ガーゼを二重巻きにして測定した場合

通常測定値 誤差(1) ガーゼ・二重巻きによる測定
測定値 誤差(2)
デジタル温湿度計(※)(%RH) 45.3
アスマン通風乾湿計(%RH) 46.0 +0.7 50.0 +4.7
板付(簡易型)乾湿計(%RH) 51.0 +5.7 52.0 +6.7

ガーゼが汚れた状態で測定した場合

通常測定値 誤差(1) 汚れたガーゼにて測定
測定値 誤差(2)
デジタル温湿度計(※)(%RH) 45.6
アスマン通風乾湿計(%RH) 46.0 +0.4 49.2 +3.6
板付(簡易型)乾湿計(%RH) 51.0 +5.4 52.3 +6.7

※デジタル温湿度計はロトロニック製 デジタル温湿度計 HP22-Aを分流式精密湿度発生装置にて校正したものです。この指示値を基準とし表中の誤差を算出しています。(HP22-Aや分流式湿度発生装置については後々ご説明します。)
これらの制限、問題点以外にも乾湿計で湿度を測定する場合、注意事項がありますので、乾湿計で湿度を正確に測定するには、ある程度の知識と慣れが必要です。