湿度を極める!・・・恒温恒湿槽に違う方法でアプローチ!

いろいろな温度と湿度の環境を作る装置として恒温恒湿槽がありますが、

今回はその続きであります。

この方法で作った私達の装置はより高精度な恒温恒湿槽として・・・

すでに気象庁をはじめとする全国の校正機関で採用されているのですね。

まずはその方法ですが湿度計ー性能試験方法(JIS B 7920)に書かれています。

発生方法としては4種類あると思って下さい。

● 二温度法
● 二圧力法
● 二温度二圧力法
● 分流法

ここで1番使い易い方法の二温度法と分流法を中心に説明しますね。

 

二温度法とは・・・

試験槽より低い温度において水蒸気で飽和された飽和槽内の空気を試験槽へ送る。両槽内の圧力が等しければ、試験槽内の相対湿度は飽和槽内の温度における飽和水蒸気と試験槽内の温度における飽和水蒸気圧の百分率で求められる。試験槽内の設定温度に対して飽和槽内の温度を調節して、所定の湿度の空気を発生させられる。

ちょっと難しい言葉で書かれているのですが、

簡単に言えばある温度で湿度100%を作り、

温度の高いチャンバーに送ることにより任意の湿度を作る方法です。
(温度が高くなると相対湿度が下がるという理屈です)

 

ちなみに飽和槽とはこのように空気(ガス)を細かい泡状にして、

水の中を通すことで加湿する方法です。

水は温度を精度良くコントロールできるので、

加湿器とは違い具合が良いのですね。

 


お次は分流法についてです。

分流法とは・・・

乾燥空気を二つに分流し、一方は飽和槽を通して水蒸気で飽和させた後に二つの流れを混合し試験槽へ送る。
試験槽内の相対湿度は、両槽内の温度及び圧力並びに乾燥空気の分流比から求められるので、この分流比を調整して所定の湿度の空気を発生させられる。

これも簡単に言うと・・・

湿度0%と湿度100%の空気を同じ量だけ混ぜ合わせると、

湿度は50%になるというものです。

この割合を変えることでほぼ全域で湿度がコントロールできるのです。

 

このような方法を使ってチャンバーに湿度を送り込むのですが、

チャンバーの方の温度コントロールも一工夫しています。

 

それがこの水を循環する方法です。

温度が0℃以下、100℃以上の場合は水以外の熱媒を使います。

もちろん・・・チャンバーを水に水没させる方法もありですが、

試料やセンサを出し入れするにはこれが良かったのですね。

 

当ブログの運営母体である第一科学では、

上の二つの発生方法を組み合わせて装置をマニアックに作り込んでいます。

そのフロー図がこちらです。

この発生装置(二温度分流法)は原理的には簡単なのですが制御が複雑なため、

様々なノウハウがこの中ににあるのです。

この装置の特長を2つほど紹介しましょう。


まずは一つ目ですが・・・

前記事で書いた恒温恒湿槽はPID制御を採用しています。

この制御のトレンドとしては左のような傾向になります。

設定値に対し差が徐々に小さくなる感じになります。

特にこれが顕著に表れるのが高湿域ですね。

いわゆる天井(100%rh)がある為に結露が生じ易かったりします。

 

それに対して二温度分流法では定まった湿度をチャンバーに送り込む為、

オーバーシュートがありません。

設定値に綺麗に近づくトレンドを得ることが出来るのです。

しかも安定性にも優れています。

 

 

二つ目の特長がこちらです。

恒温恒湿槽では実現できない温度と湿度の領域が可能になります。

特に氷点下環境試験には有効だと考えています。

 

興味のある方は一度、こちらを見て下さいませ!

 

氷点下でも環境試験が出来る装置→こちら

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湿度を極める!・・・恒温恒湿槽とは?

いろいろな温度と湿度の環境を作る装置として恒温恒湿槽があります。

これがとても便利な箱で・・・

部品の耐久性試験、薬などの保存安定性試験、いろいろな研究開発などにも使われているのですね。

日本の製品は壊れないという定説の陰には、

この恒温恒湿槽という存在が欠かせないのであります。

特に自動車業界ではこのような装置を5000台以上所有している会社もあるので、

ちょっと驚いてしまいます。

 

話は脱線しますがこの恒温恒湿槽の恒の字を調べてみると・・・

①いつでも変わることなく同じであること。永久不変であること。
②いつもそうであること。ふだん。平素。
③昔からそのようになるとされていること。当然の道理。ならい。ならわし。

と書いてありました。

「いつもそうであること」はまさに温度と湿度の環境を一定にする事に通じていますが、

ここでちょっと意地悪な解釈をしてみますね。

「昔からそのようになるとされていること」という言葉。

これを「本当に今のままで良いの?」という切り口で解説してみます。

 

まずは恒温恒湿槽の仕組みを見てみましょう。

扉を開けて中を覗いてみると奥に空気の取り入れ口と吹き出し口が見えます。

実はこの奥にこの絵のような仕組みが隠されているのですね。

・槽内に温湿度センサーを設置。
・その信号を調節器に入力。
・冷却器と加熱器で温度を制御する。
・湿度は加湿器と冷却器(除湿器)で制御している。

ここでちょっと考えていただきたいのは・・・

小さな箱の中に熱い部分、冷たい部分、除湿する部分、加湿する部分がある事。

これは安定する環境を作ることの原理原則からは矛盾しているのです。

だから温度分布も湿度分布も起こしやすいという特質を持ってしまっているのです。

 


実際にこの絵のような位置でその分布を見てみましょう。

一般的に恒温恒湿槽の世界ではこれを9点測定と呼んでいます。

もちろん、性能確認には規格があるので興味ある方は紐解いてみてください。

「IEC 60068-3-5 温度試験槽の性能確認の指針など」

 


これが実際に計測をした温度の性能を計測した表です。

一般的に大体同じようなフォームで記載されて恒温恒湿槽メーカーから提出されるのですね。

 

比較的条件の良い20℃設定においても内部の分布は0.3~0.5℃存在します。

縦軸で見ると時間ごとにこれも0.3℃ほど変化していることが分かります。

つまり、温度の制御自体比例制御で行っているので、

安定と分布などが重なって最大幅で0.8℃変わっていることが確認出来ます。

性能としては槽中央の温度のみを無負荷で平均化して表示しているのでよく見えてしまうのです。

 


お次は湿度です。

相対湿度の場合・・・温度分布により相対湿度が1番影響されます。

これには一定の関係があって1℃温度が上昇すると湿度は3%降下する。

従って最大幅で0.8℃変わっていることより・・・・

0.8℃?3%=2.4%の変化があることになります。

理論的には小さくすみそうなのですが・・・

表を見てみるとかなり大きな分布が存在します。

特に条件の良いと思われる槽中央の位置が高く表示しています。

加湿する場合、槽内の奥下にパンに水が張ってあるのですが、

この加湿によりどうしても分布は大きくなるようです。

非常に面白いデータであります。

これを知った使用者の方が温湿度センサを使って実測する気持ちが分かりますね。

 

そのような時に使われるセンサはこちらが多いので紹介しますね。

計測用温湿度センサ

 

 

 

 

 

 


さて、最後に恒温恒湿槽の温湿度設定範囲を見てみましょう。

パンに水が張ってある構造上・・・

自然と水が揮発してしまうことから低温・低湿が苦手です。

除湿器と組み合わせして行う方法もあるのですが、

あまり良いデータは取れていないと聞いています。

 

これに対し全く違うアプローチを次に記事に書きますのでお楽しみに!

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